キヌレニン経路とストレスの嗜癖性障害におけるメディエーターとしての役割。アルコール使用障害とインターネットゲーム障害を中心に

  • Jang, J. H., Yoo, S. Y., Park, Y. E., Ji, M.-J., Park, H.-M., Back, J. H., Lee, J. Y., Kim, D. J., Lee, J. E., & Choi, J.-S. (2022). The Kynurenine Pathway and Mediating Role of Stress in Addictive Disorders: A Focus on Alcohol Use Disorder and Internet Gaming Disorder. Frontiers in Pharmacology, 13, 865576. https://doi.org/10.3389/fphar.2022.865576

ストレスは嗜癖性障害の病態生理に重要な役割を担っている。神経免疫および認知機能に関与するキヌレニン(KYN)経路はストレス下で活性化される。しかし、嗜癖性障害におけるストレスの役割における神経免疫学的・神経認知学的メカニズムは、現在も不明である。本研究では、18~35歳の若年成人99名[アルコール使用障害(AUD)、N=30;インターネットゲーム行動症(IGD)、N=34;健康対照(HC)、N=35]が参加した。ストレスレベル、レジリエンス、嗜癖の重症度、神経認知機能を評価し、血液サンプルを通じて液体クロマトグラフィー結合タンデム質量分析法を用いてトリプトファン(TRP)、5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)、KYN、キヌレニン酸(KYNA)の血清濃度を測定した。嗜癖障害群はいずれも、HC群と比較して、ストレスレベルが高く、レジリエンスが低く、実行機能が低下していることが示された。重要なことは、AUD群では、HC群と比較して、KYNレベルおよびKYN/TRP比が有意に上昇し、KYNAレベルおよびKYNA/KYN比が低下したことである(それぞれp < 0.001, p < 0.001, p = 0.033, p < 0.001) 。IGD群では、KYNレベルおよびKYNA/KYN比は、AUD群とHC群の中間であった。さらに、AUD群では、ストレスレベルを介したAUDのKYNに対する媒介作用は、レジリエンスによって緩和された[緩和された媒介の指標=-0.557、ブートS.E=0.331、BCa CI(-1.349,-0.081)] ことから、ストレスはKYNに対する媒介作用として作用することが示唆された。ストレスはKYN経路の代謝物の下流のアンバランスを誘発し、KYN/TRP比は両嗜癖性障害のストレスと行動変化の間の神経媒介者として機能する可能性がある。本研究は、KYN経路の制御が嗜癖性障害の病態生理に重要であることを示唆し、今後の治療法の重要なターゲットとなる可能性がある。