ゲーム障害治療における児童青年精神科医の役割の重要性増大。日本における現状

  • Tateno, M., Matsuzaki, T., Takano, A., & Higuchi, S. (2022). Increasing important roles of child and adolescent psychiatrists in the treatment of gaming disorder: Current status in Japan. Frontiers in Psychiatry, 13, 995665. https://doi.org/10.3389/fpsyt.2022.995665

概要
背景 デジタルゲームは、日本の子どもや青少年、特に男性において最も一般的な余暇活動である。オンラインゲームの利用は、学齢期の子どもたちの間で年々一般的になってきている。その結果、低年齢層における過度のオンラインゲーム利用が、日本における重要な社会問題となっている。これまでの研究により、過度なオンラインゲームは、子どもや青少年にさまざまな精神的問題を引き起こす可能性があることが明らかになっている。児童・思春期精神科を有する医療機関においても、過度のオンラインゲームに関連した様々な問題を抱える児童・思春期生が増加している。本研究の目的は、日本の臨床現場におけるゲーム障害(GD)の診療の現状を調査することである。

方法
本研究の対象は、日本児童青年精神医学会(JSCAP)認定の児童青年精神科医414名全員である。日本児童青年精神医学会事務局より調査票を全対象者に郵送した。調査対象者は匿名でアンケートに回答するよう依頼された。調査票には、自由回答、単一選択・複数選択回答、5段階リッカート尺度の3種類の回答が含まれていた。質問項目は、GDに関する14問であった。

結果
159名の回答があった。児童青年精神科を受診し、GDと診断された理由で最も多かったのは、登校拒否・不登校、次いで睡眠・覚醒リズムの乱れであった。現在、児童青年精神科で行われているGDの専門的治療で最も多いのは、個人精神療法である。GDの治療で最も頻繁に経験する困難は、回復を達成するためのモチベーションの低さと、過度のゲームそのもの以外の複合的な問題の多さであった。また、GDの3大併存精神疾患については、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、うつ病であった。

考察
今回の調査結果から、GDは行動嗜癖であるにもかかわらず、多くのGDの子どもや青年が、通常成人患者向けに設計されスタッフが配置されている依存症の専門クリニックではなく、児童・青年精神科クリニックを最初に受診していることが明らかになった。GDは中学生や高校生などの若い男性に多く見られることが知られているため、GDは今日の児童青年精神医学における最も重要な臨床問題の一つになっている。GDの治療において児童青年精神科医が果たすべき重要な役割は、ますます大きくなってきている。